種類:ガム 場所:ウィンザー(カナダ) 価格:¢20 |
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この世には二つのものが存在する. 食べられるものか,否かである.全てはこれに帰するのである. 例えばスーパーに行ったとしよう.そこにある食材は,食べることができる. 味がどうであれ,誰かしらはそれを買い,そして食べる.ごく当たり前のことである. では,お店を飛び出すとどうか?そこにはやはり食べ物があふれている.これまた人によるが, 昆虫の類だって,立派な食べ物だし,そのへんに生えている草だって,毒さえなければ,食べようと思えば 食べることができる. ただこの食べ物というコンテンツは,そんな道端に生えている草なんぞを紹介するのが目的ではなく, 世界中で出会った素敵な食べ物を紹介するのを目的としているのだ. そう,このコンテンツに挙がっている食べ物の類は,僕が旅先や滞在先で出会い,実際に食べてきたものである. これは,重要だ.実際に自分で食べ,感じたことを記していく. ところが,今日,紹介するものは実際のところ,口にはいれたが,食べていない.どうもこの食べ物というコンテンツに 相応しくないような気がしなくもないが,こいつは普通なら食べ物だ. とあるスーパーで一個33セントが,なんと20セントに値引き.これは買わないわけにはいかない. いや,初めはネタにしようなんて,これっぽちも思ってもいなかったのだ. なぜなら,僕が買ったのは,単なるガム. そう,20セント払い,購入したものは,ガムである.1カナダドルが98円(2006年1月20日現在)であることを念頭に置けば, 20円程度である.つまり,日本で言うところの駄菓子だ. では,なぜこれを食べることができなかったのか?それは当然の疑問であり, ジャコウウシやゴートカレーを初め色々妙なものを食べてきた僕らしくないといえば,らしくない. ちなみに,僕の母親は貰い物のお菓子などは,まず賞味期限が切れるまではしまっておき, ようやく切れると,さあ,食べましょう,なんていう人だ.そんな親のもとで育てば当然のごとく,賞味期限なんてものは そんなもん大して気にしない人間になってしまう. つまり,賞味期限がきれたことにより,僕はこのガムを食べることができなかったのではない.他に理由があるのだ. では,何が原因か?それはこう言えばいいだろう.物理的に不可能だった.では,物理的に不可能とは? それは,つまり,硬かったのだ. …これほど重要な問題が今まであっただろうか?硬くて,噛むことができない.文字通り歯が立たないとは このことだ.いや,冗談ではなく,本当にこのガムは硬いのだ. まず,僕は噛んでみた.普通のガムだと思ったからだ.しかし,硬い.尋常じゃない硬さ.少しもかじることさえできないのだ. そこで,少々でかいが,とりあえず次に口に含んでみることにした.そして,あらん限りの力を振り絞り,奥歯で噛んでみる.….結果はかわらず. ガムはその原型を留めていた. 食べ物というよりは,石ころでも相手してるかのような感覚.ここまでくると,こちらも意地になる. だいたいたかが20セントのガムに傷一つつけることができないなんて,情けない話だ. 何とかしてせめて少しは味を見てみたい.そこで,リスのごとく前歯で,かじってみることに.….あー,なんだこのクソ硬いガムは!! なんで少しもかじれへんねん.という怒りとともに,思いっきり力をいれると,それは起こった. ポキッという音とともに,小さな白いかけらが口に入る.おっ?と思うも,何か違和感を.イヤな予感がし,鏡を見ると, そこで見たものは!!…前歯が書けた自分の姿. 正確にいうと,欠けたのは差し歯の一部.なんて,分析している場合ではない.差し歯なので,痛くもなんともないが, 格好がつかない.それに,これが起きたのは実のところ7月の終わりごろで,1週間後にはユーコンという まさに切羽詰った状態. それよりも,歯医者に行くのがだりいなぁと思うわけですよ.よく言われる,海外の歯医者は保険が利かないから,ものすごく 高いというお話.そんな金もないし,なによりガムで差し歯を折るって,どんなバカなんだ?恥ずかしすぎる. とはいえ,このままユーコンに行くわけもいかないので,歯医者に行き,事情を説明.すると,ここで驚愕の事実に出会った. 半ば開き直り,ガムをかじったら歯が折れたと説明する僕.すると,歯科衛生士さんは,どのメーカー?これ?これ?これ?と3つぐらい メーカー名を挙げるのだ. 別に笑うわけでもなく,普通にどのメーカー?って聞いてくる歯科衛生士さん.それよりも, なんでそんな地雷みたいなガムメーカーが3つもあるんだ?そっちにビックリて話だ. ガムのメーカーは調べていかなかったのだが,とりあえず,その場は緊急というわけで,欠けた部分を 接着剤でくっ付け,んで,磨いて終了. お値段は確か70ドル.高いのか安いのかはさっぱりと分からない.しかし,はっきりしているのは, たかが20セントのガムのために70ドル吹っ飛んだという事実である. その後,ユーコンから帰り,再び歯医者に行った.そういう約束だったからだ. また治療しなおして,今度は30ドル.問題はないように見えた. だが,今日,この1月20日という日に,悲劇は起きた.夕食で買ったPITAをかじると, なにか違和感を前歯に感じた.イヤな予感がした.そして,口に残る差し歯の欠片. このたかが20セントのガムは,いったいどれだけの損害を生み出してくれるのだろうか? つーか,訴えてもいいんじゃねーか?このクソったれなガムを作り出してくれたメーカーさんを. 皆さんも,海外で食品(特にガム)を購入する場合は,お気をつけて.あなたの購入した食べ物は,実のところ 食べ物に分類すべきではない物質かもしれないのだから. |