入国カード

ペンをスチュワーデスさんに借りて
入国カードをなんとか埋めていくと
何個かよくわからない箇所がでてきた.

それはオーストラリアに持ち込んでいるものを選ぶ箇所.
土がついた靴とかいう項目がある.

運動靴を履いてきていて,こいつには
カナダで友達とサッカーの真似事をやったときについた
土が多少ついている.

たしか審査はけっこう厳格だったよな
とか思うも,でも,これは常識の範囲内でいけば
別に申告するまでもないはず.

どうしよう.ということで,スチュワーデスさんに訊くと,
答えは,それぐらいなら別に平気ではないかという由.

さらに,入国目的だかなんだかそんなところで
選択肢の中から選ぶのだが,そこでも問題があった.

研究の一環として岩石試料の採取

こいつが入国の理由なのだが,そいつに
あてはまるものがない.

ビザはオーストラリア大使館のアドバイスに従い
短期商用ビザをとっているので,商用でもいいのかもしれないが,
でも,商用かどうかといわれれば,そうでもない.

教育ってのも違うだろうしなぁ.

というわけで,これもついでにスチュワーデスさんに訊いた.

研究のために石を取りにいくんですが
それってどれになるんでしょうか.

石を取りに行くんですか?
えっと教育じゃないですよね.
でも,別に趣味で石を取りに行くわけじゃないですよね?

そうですね.趣味じゃないです.
大学院で研究していて その実験試料なんですよ.
いちおビザは商用をとってあるんですが.

あぁ,そしたら,商用でいいんじゃないですか.
それかその他ですね.

というわけで,その他にしておいたのだが
なんていうか,あれだ.

趣味で石を取りに行くのか.

…だれが?

10万弱の金払って,趣味で石を取りに行くなんて
それはなんとも贅沢でバカらしい趣味だろう.

それにしても,趣味って言葉がでてくるもんなんだ.
やっぱ地球科学やってない人から見れば,
石を取りにオーストラリアってのは
なんともけったいな部類に属するんだろうなぁ.

まあ,けったいじゃないかといえば
僕自身,そんなことはないというぐらいの
自覚はあるのだけれども,やっぱりなんか壁を感じた.

閑話休題.
入国カードを記入していて思ったのは
これはゼッタイに入国のとき面倒なことになるのではないか?
ということ.

アメリカにサンプリングに行ったときも
国境で石を取りに行くといったらごちゃごちゃと
訊かれたし.

このときは,うちの教授が受け答えをしていたので
まったくもって問題なかったのだが,今回は
僕1人でのサンプリング.

様々なものに持ち込み制限があって
いろんなことをしつこくチェックしてくる
オーストラリアという国で,石を取って帰ります
なんていったらこれは面倒なことにならないほうが
おかしいといったものだ.

そこで,お腹がいっぱいで寝付けないこともあって
お勉強タイム.

別に古地磁気のことを訊かれる分には問題はないのだけれども
対象となる石のことを訊かれるとちょっとあやふやな部分が
あったので,論文を読んで復習.

どうせサンプリング前には論文を読みなおして
サンプリングに備えないといけないと思っていたので
ちょうどよかった.

して,論文を読み終え,頭にある程度叩き込んだら
再び眠くなってきた.

そのまま目を閉じて,オーストラリア到着を待つのだった.

 

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