決まりごと

居住地から勤務先というのはなんだか
違和感を感じるのだが,勤務先までは車で20分ほど.

ただだだっ広い赤茶けた大地を
走っていく.

のだが,実はなにもないわけではない.

居住地を離れるとすぐに1つの建物が見えてくる.

鉱山.

陸の孤島と呼べるこの場所にある
居住地と勤務地をつなぐ道路にある建物,いや施設.

わかるだろうか.

僕はまったくもって想像していなかったのだが
それは検問所だった.

といっても別に犯罪でもなんでもない.

事故防止のための検問所.

毎朝(夜間シフトの人は毎晩?),かならず
そこで立ち止まり,ハァっと息を吐いていく.

そう,アルコール検査だ.

どうしても娯楽が少なくなるこの地.

そんなところで楽しみとなれば
いわずもがな,アルコールとなる.

もちろん居住地ではアルコールを購入することは
できるのだが,これが万一翌朝に残っていたり,
朝景気づけに一杯となれば 大変なことになるのである.

タイヤ1つで軽く自分の背を超える
バカでかい工事用トラックが縦横無尽に走り,
頻繁に発破作業が行なわれる.

blasting
発破作業

ほろ酔い加減で迷い込んだら
事故が,それも重大な事故が起こる危険性が 非常に高く,
だいたいほろ酔い気分で職場に
行くのもどうかというお話だが,そのような
事故を避けるべく,飲酒検査が行なわれるといわけだ.

毎日,サンプリングが終わったあとに,お酒を飲んでいたが
幸いにもというか当然,翌日に残るほど飲むことはしないので
ひっかかることはなかった.

この安全対策というのは,非常に厳しく行なわれていると思う.

別にこの場所に限ったわけではなく,
後々どこの鉱山会社にいっても 出会うことだったのだが,
まずセキュリティーについての一般知識を
身につけることから,サンプリングの作業は始まる.

職場についたら,共同研究者の人は仕事があるから
その間に,これ見といてと,パソコンの前につれていかれた.

そこでは,各種サイン(立ち入り禁止とか), 緊急用の
無線の番号(3種類あった),お酒,ドラッグはダメ,絶対.
怪我をしたらここに連絡,みたいな鉱山会社の
ルールを学ぶことになる.

これはぼけ〜と見とけばいいかといえばそうでもなく,
その後,テストを受けないといけない.

もちろんたいていは常識で考えればわかることばかりで
トリッキーな問題は何一つなかったが,番号などはいちお
頭にいれとかないと,ダメだろう.

その安全対策ビデオを見終わったら,
いよいよサンプリングに関する話.

カナダで作っていったサンプリング計画を出し,
こちらの希望を伝え,スケジュールを練っていく.

といっても,このスケジュールを練る作業は
ほとんど共同研究者の人にお任せ.

なにせ日々変わっていく鉱山なので
現場の人間じゃないと,それを把握できない.

例えば,論文に載っている地図を取り出して
ここが…といっても,もうその部分は存在しない可能性が高いし,
さらにそこが安全に作業できる場所なのかもわからない.

つまるところ,サンプリングにかかるだいたいの時間と
こっちの計画書を渡して,なんとかして!と頼むしかない.

で,結果からいうと,このサンプリングは
大成功だった.

予想以上に試料が取れ,時間も余裕がある感じで
終わることができた.

…なにか話が終わってしまった.

まあ,たいしてサンプリングについては
触れる気もないのだが,とりあえず
こんな1日を送っていたということで
次回は,ある1日を紹介といきたい.

 

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